ここは東大陸の入り口グリーンズグリーン。
 そこには一つの船が停泊していた、その船に灰色の軍服を着た兵隊達が荷物検査をしている。それは東大陸にも拠点を持つ帝国兵士達だった。

「どうする?」
「どうするって……勿論ずらかるさ」
「どうやって?」
「多分、こうやって!」

 荷物室から一人の少年が飛び出した、黒い帽子に黒いエルメアを着て黒い髪の毛は腰ぐらいまで伸びている。彼の名はアデル・ロード、中央大陸を拠点とするカルナックのリーダーだ。その後ろからやれやれと言いながら青いニット帽を深くかぶった眼鏡姿の少年が飛び出す。
 荷物室から飛び出した二人は帝国兵の調査団と接触しそれらを全て斬り殺した。甲板に出ると身体検査をしている帝国兵が数人居た。

「貴様、アデル・ロード!」
「ほう、俺の名前知ってるのか。驚きだな」
「いや、多分手配書を見てるからじゃないか?」

 身体検査をしていた数人が肩に提げているショットパーソルを構えて数発発砲する、その弾丸はアデル達の足下に着弾して甲板に小さな穴をつくりだした。

「中尉を呼んでこい!」

 体格の良い帝国兵士がショットパーソルを構えながらそう叫んだ、わかりましたと部下が一人血相を変えて船を下りて自分たちのテントの場所まで走りだす。

「なぁ、手っ取り早くやろうぜ。人数が増えるとやっかいだ」
「同感!」

 アデルとガズルはそれぞれ小さな体格から想像も付かない力を使いそれぞれ跳躍した、高く飛び上がった二人は勢いよく数人の帝国兵へと襲いかかる。

「小僧!」

 一発アデルの至近距離で発砲された、だがアデルは剣を引き抜くとその弾丸を弾いた。

「でやぁ!」

 右に構える剣を逆手に持ち替えてショットパーソル目掛けて切った、鉄で出来た銃口はいとも簡単に切れ甲板にゴトンと言う音と共に落下した。そしてアデルは硬直する帝国兵の腹部を切断した。
 そして次の目標に向かって走り出す。
 ガズルも飛んでくる弾丸を寸前の所で左右にかわして一人の帝国兵の鳩尾(みぞおち)に強烈な打撃をたたき込む、悶絶した帝国兵の身体を低く構えた状態から回し蹴りを入れる。大きく吹き飛んだ帝国兵は数人を巻き添えに船から吹き飛ばされた。

「このまま船を出るぞ!」

 アデルがそう叫びガズルがうなずいた。そして船から出ようとしたその時何時しか見た帝国兵が目の前に現れた。

「そこまでだ二人とも」



「何が騒がしいんですか?」

 グリーンズグリーンの町中で人々がざわめき始めた、その騒ぎに花屋の店番をしていた一人の少女がエプロン姿のまま路上に出てきた。
 黒い髪の毛で肩より少し上の方で短い、身長は百五十ちょっとの普通の少女だった。その少女の目の前で隣の店の叔母さんがシフトパーソルを持って店から飛び出してきた。

「ちょっと、マーグレスさん。そんな物騒な物持ってどうしたの?」
「あらアリスちゃん、実は今中央から来た船と帝国の連中がドンパチやってるって話じゃないか、この御時世帝国に喧嘩売るなんて凄い奴等だろうね。もしもだよ、そいつらが町中で暴れたりでもしたらこれで撃ち殺してやろうと思ってね」
「相変わらず過激ですね、私なら……」
「アリスちゃんなら?」
「その人達を助けて一緒にこの町を出たいかな?」
「また始まったよ、本当にアリスちゃんは旅が好きなんだね」
「まぁ、この御時世ですからね、色々とやってみたい事は有るんですよ」
「そうだね、でも――」

 マーグレスの言葉が中断した、中断と言うより遠くの方で大きな爆発音が聞こえてそれがマーグレスの言葉に重なった。

「うわー、本当にやってるんだ」

 爆風で短い髪の毛がサワサワと揺れる、路上の誇りが舞い上がりエプロンの下のスカートをばたばたと揺らした。


 船上では激しい炎が上がっていた、ガズルは身体毎吹き飛ばされアデルも同じようにして奥の方へと飛ばされた。

「ててて、ちきしょう。あの時戦わなくて正解だったな」
「アホ、今だって同じだ!」

 アデルとガズルは互いに起きあがり今目の前にいる敵を睨んだ。

「次は見逃さない、そう言ったでしょう?」

 レイヴンが楽しそうに笑う、冗談じゃねぇとアデルが苦笑いをしてから両手に構える剣を逆手に持ち変える。

「律儀な野郎だ」

 アデルが飛びかかる、綺麗に剣の軌道を残しながらレイヴンの身体すれすれの所を切る。別にアデルが手を抜いてるわけではない、レイヴンが微妙な所で避けているだけだ。
 そして両者の剣がぶつかる。

「それにしても良い剣さばきですねアデル君。――師は誰だ?」
「……カルナック、『カルナック・コンツェルト』」

 その名前にレイヴンが驚く、暫くの沈黙が続いた後アデルの顔を熱い眼差しで見る。

「あの人ですか、ならば一層手を抜く事は出来ませんね」

 ニヤリと不気味に笑いアデルの剣をはじき飛ばした、アデルはその勢いのままガズルの方へ飛ばされる。

「あんた、おやっさん知ってるのか?」
「勿論知ってますよ、あの人は親友です。ただ、特殊な意味でのですけどね」
「どういう意味だ!」
「……そうですか、あなた方は何も知らされていないようですね」

 つかつかと足音をたててゆっくりと歩き出した、茶色い髪の毛が周りの炎にてらされてより一層深みを増す。次第にその髪の毛の色は茶色い色から深紅の赤色に変わった。

「貴方がカルナックの弟子というのなら勿論この法術は学んでいますね?」
「何!?」

 また一つ笑みを零すとレイヴンはアデル達の目の前から消え、音もなく後ろに回り込まれた。

「な!」「はぁ!?」

 首を後ろの方へと向きを変えるとレイヴンが左手を大きく振りかぶっていた。

「遅い」