抜刀の途中だった刀を鞘へと納めるとメルへと視線を移した。ゆっくりと床に着地しするメルだが体中のオーラが消えたとたんに糸が切れた操り人形の様にバランスを崩した。それをすぐさまレイが受け止めて抱きかかえる。

「一体全体何がどうなってるんですか先生」
「話は後です、先にメル君を休ませてあげましょう。あれだけ膨大なエーテルを消費した後です、意識を保っているのが不思議なくらいです」

 確かにメルの意識は朦朧としていた。だが一体彼女のどこにそんなエーテルが貯蓄されていたのだろうか、彼らの目に映っているメルはその辺にいる普通の女の子である。格別旅人と言う訳でもなく、仮に旅人というには貧弱すぎる。しかし実際に起きた事を考えるとその考えを改めなくてはならない。法術が苦手というアデルですら剣聖結界発動でまともに操作できる精神寒波の抑制を普通の一般人が――それも氷雪剣聖結界を身にまとっているシトラの精神寒波を跳ね退け体を束縛する法術をカルナックより先に解除した技量、その二つを取っても尋常ではないことが分かる。