カルナックが叫んだ、だがそれに眉一つ動かさずにレイだけを見つめていた。

「御免なさいね先生、私も帝国側の人間なのよ。強いて言えばなんだけど」

 見つめていた目線をゆっくりとカルナックに向ける、とてもカルナックが知っている彼女の目で無い事が分かる。まるで何かを悟ったかのように冷たい視線がカルナックに向けられている。

「元々反帝国分子を潰す様に命令されていた私だけどあの人から通達があったのよ、面白い子供達がいると。興味が湧いたわ、剣帝序列筆頭が言うだけの事は確かにあった。こんなに若い内から剣聖結界まで取得するなんて本当に面白い。いえ、恐ろしくも思えるわね。この子達は今後帝国にとって確実な脅威になる、だからこそ私とあの人で潰しておこうと思ったのよ。でも先生が一緒だと分が悪いでしょ? だから勿体ないけど今ここで殺すの」

 矛先を突き付けられているレイは結界のせいで瞬きすることもできなければ声を上げることもできない。だがその恐怖は確かに刷り込まれている。確実に死ぬ、そうレイは考え始める。

「手合わせしてみたかったなぁ」

 視線を戻して再びレイを見つめる、瞳孔は開き心臓が高鳴るレイだが成す術もない。

「あまり長話してもあの人に怒られてしまうわね、幕を引いちゃいましょうねレイ君」

 最後にニッコリと笑った、後悔も迷いも一切ないその顔でシトラは笑った。右手に持つ氷の槍を引いて力一杯レイの心臓目掛けて一突きにしようとした。が、そこで違和感を感じる。

「えっ!?」

 突き刺さる一歩手前でシトラの槍は突如として目に見えない何かに阻まれてしまう。揺ら揺らと波打つ透明な障壁がかすかに見える。この状況で一体誰が展開したのだろうか。

「――めて」

 かすかに声が聞こえる、カルナックですらやっとの思いで声を出しているというのに他の人間が声を出すなんて不可能なはず。だがその正体はレイのすぐ後ろから聞こえてくる、彼のすぐ後方から揺らめく青いオーラが見える。強烈なエーテルが体の外に放出されている。

「やめてぇー!」