「しつけえっての!」
何度も何度も重力波を繰り出すガズルの攻撃はクラーケンには全く聞いていなかった、それどころか足を捕まれて今にも海の中に引きずり込まれそうになる。
だがガズルもそればかりは勘弁と言わんばかりに必死に抵抗した、からみつく足に噛みついたり、巨大な重力波を作り出したりと必死な抵抗を見せた。
「うわぁ!」
クラーケンがガズルに向けて水を勢いよく掛けてきた、それを手に作り出した重力波で吸収する。
「もらったぁ!」
重力波を作り出した手を真上に挙げてそれを思いっきりクラーケンにたたきつける、重力波がクラーケンに当たるとその中から水が噴き出してきた、その水は重力によって凄まじいほどの水圧に変わりクラーケンを切り裂く。
「っはは! ざまぁみろ!」
自分の足にからみついていたクラーケンを足がほどかれたのを見計らってもう一度重力波をたたきつける、するとその反動でガズルは船の方へと押し戻される。
「痛てぇ!」
着地に失敗した、それを後ろの方から笑い声聞こえる。
振り向くと巨大なイカの足を良い具合に焼けた物を持って船の中から出てくるレイが居た。
「レイ、なんだそれ?」
「何って、クラーケンの足。結構美味しいよ?」
あつあつと言いながらほどよく焼けたイカの足を食べるレイにガズルは少し引いた、だが暫くしてから自分の後ろの方で何か物音が聞こえだした。
それは戦闘を終えて船に戻ってきたアデルだった。
「あちちち、焼きすぎたかな?」
「アデル、それは?」
「あ? レイと同じ物だよ、なんだガズルは確保しなかったのか?」
黒こげになったクラーケンお足を美味しそうに喰らうアデルを見てため息を一つ付いた、ずり落ちた眼鏡を直して操舵室の方へ親指を上に突き立てた。艦長が窓から呆気に取られた表情で三人を見ていた。
「本当に、化け物かお前ら」
艦長はそんな事を呟きながらガズルに向かって親指を上に突き出す、そして進路方向修正を舵室に繋げた。
「何だ、男かと思ったら女だったのか」
前方百メートル手前でアデルが双眼鏡を手にそう言った、難破船にはしごが下ろされた。しっかりとしがみつきながら登ってくる女性をレイが上から物珍しそうに見ている。
「女の子?」
少し興味有りそうにレイはそう呟いた、初々しいというか何というかガズルとアデルが楽しそうにレイの顔ををのぞき込む。
「レイ、このむさ苦しい船に女の子が乗ってきたのがそんなに嬉しいのか?」
「違うよ、ただ珍しいなって思ってさ」
「珍しい?」
ガズルが疑問そうにそう言った。
「だってそうだろ、こんな真冬の海で難破した船に取り残されてるなんてさ。見たところあの子一人だけだし、他の乗客は見あたらない」
なるほどとアデルが言った、ガズルも妙に納得した感じでうなずく。船の節に女性の手が出てきた、そしてゆっくりと身体を持ち上げて身体全体を見渡せる所まで来た。
「あの、有り難うございます」
その子は少女だった、見た目レイと同じか少し年下ぐらいだろう。黒いジャケット、ロングスカートにブーツを履いていた。
「――メル?」
レイが突然キョトンとした顔でそう言った、メルと呼ばれた少女は不思議そうにレイの顔を見る。そして少し悩んだ末に有る事を思い出した。
「もしかして、レイ君?」
「やっぱりメルだ! こんな所で何してんの?」
訳が分からず話がトントン拍子に進んでいるこの状況に全く付いていけない船員は勿論アデルとガズルはレイの顔をしばし睨んだ。
「おい、二人で妙に納得してないで説明が欲しいのだが」
後ろから艦長がゆっくりと寒そうに姿を現した、レイの方に腕を回してそして低い声でそう言った。
彼女は半年ぐらい前に偶然レイが立ち寄った街で知り合った少女で、名前はメルリス・ミリアレンストという。愛称はメル、ノーズフィップ出身の田舎町に生まれた。メルは両親を探して世界中を旅して回って居る途中、最初に述べた街で偶然にもレイと知り合う。そして二ヵ月の間一緒に旅を続けていた。
「ほう、お前さんにそんな経歴があったとはな。俺はてっきりお前ら三人の実につまらない男旅をずっと続けていたんだと思ってたぜ」
大声で笑いながら艦長はレイ達を冷やかした、冗談は止めてくれとガズルが少々ムッとした表情で答えそしてアデルが笑い出した。
「ところで、レイ君は何してるの?」
分が悪そうに苦笑いをしているレイの目の前でそう質問した、レイはとある事情でまた旅をしているとメルに伝える。
「なら、私をレイ君達のパーティーに加えてくれないかな?」
「あぁ?」
アデルが実に面白くなさそうにメルの顔をも見る、余りにも怖いその表情にメルはとっさにレイの後ろに隠れる。
「御免なさい」
「いきなりだな、俺がそんなに怖いか?」
「……御免なさい」
「正直だなお前」
さらに怒り出すアデルにメルは肩をすくめる、その様子にレイが苦笑いをしながら怒るアデルをなだめる。
「まぁまぁ、僕もその意見には賛成だ、それともアデルはこんなか弱い女の子にこんなクソッタレな世界を一人で旅を続けさせるつもりか?」
「同感だ、別に良いじゃないかアデル。俺もレイの意見に賛成。俺はそこまで鬼じゃないし。それに俺達の旅仲間が増えるのはとっても良い事じゃないか、それに女の子だぞ? よく考えて見ろよ?」
「……お前らどっちの味方だよ」
「メル」「当然メルちゃんだろ?」
二人は同時に言った、呆れた艦長が話に割り込む。
「良いじゃねぇかよアデル、よく考えても見ろ。女の子だぞ?」
「だから嫌なんだ、女なんて面倒くさいし鈍くさいし……」
アデルが吠えた、呆けに取られたレイ達はみんなで集まり肩をあわせてヒソヒソと何かを話し始めた。自分だけその輪に入れずに苛立ち始めるアデルは矛先を近くにいた見張り役の船員に向けた。
話が終わるとそこにいた全員は何やら納得してアデルの方に振り向く。
「アデル、一つ聞いて良いか?」
「何だよ」
「お前、女の子を好きになった経験は?」
何度も何度も重力波を繰り出すガズルの攻撃はクラーケンには全く聞いていなかった、それどころか足を捕まれて今にも海の中に引きずり込まれそうになる。
だがガズルもそればかりは勘弁と言わんばかりに必死に抵抗した、からみつく足に噛みついたり、巨大な重力波を作り出したりと必死な抵抗を見せた。
「うわぁ!」
クラーケンがガズルに向けて水を勢いよく掛けてきた、それを手に作り出した重力波で吸収する。
「もらったぁ!」
重力波を作り出した手を真上に挙げてそれを思いっきりクラーケンにたたきつける、重力波がクラーケンに当たるとその中から水が噴き出してきた、その水は重力によって凄まじいほどの水圧に変わりクラーケンを切り裂く。
「っはは! ざまぁみろ!」
自分の足にからみついていたクラーケンを足がほどかれたのを見計らってもう一度重力波をたたきつける、するとその反動でガズルは船の方へと押し戻される。
「痛てぇ!」
着地に失敗した、それを後ろの方から笑い声聞こえる。
振り向くと巨大なイカの足を良い具合に焼けた物を持って船の中から出てくるレイが居た。
「レイ、なんだそれ?」
「何って、クラーケンの足。結構美味しいよ?」
あつあつと言いながらほどよく焼けたイカの足を食べるレイにガズルは少し引いた、だが暫くしてから自分の後ろの方で何か物音が聞こえだした。
それは戦闘を終えて船に戻ってきたアデルだった。
「あちちち、焼きすぎたかな?」
「アデル、それは?」
「あ? レイと同じ物だよ、なんだガズルは確保しなかったのか?」
黒こげになったクラーケンお足を美味しそうに喰らうアデルを見てため息を一つ付いた、ずり落ちた眼鏡を直して操舵室の方へ親指を上に突き立てた。艦長が窓から呆気に取られた表情で三人を見ていた。
「本当に、化け物かお前ら」
艦長はそんな事を呟きながらガズルに向かって親指を上に突き出す、そして進路方向修正を舵室に繋げた。
「何だ、男かと思ったら女だったのか」
前方百メートル手前でアデルが双眼鏡を手にそう言った、難破船にはしごが下ろされた。しっかりとしがみつきながら登ってくる女性をレイが上から物珍しそうに見ている。
「女の子?」
少し興味有りそうにレイはそう呟いた、初々しいというか何というかガズルとアデルが楽しそうにレイの顔ををのぞき込む。
「レイ、このむさ苦しい船に女の子が乗ってきたのがそんなに嬉しいのか?」
「違うよ、ただ珍しいなって思ってさ」
「珍しい?」
ガズルが疑問そうにそう言った。
「だってそうだろ、こんな真冬の海で難破した船に取り残されてるなんてさ。見たところあの子一人だけだし、他の乗客は見あたらない」
なるほどとアデルが言った、ガズルも妙に納得した感じでうなずく。船の節に女性の手が出てきた、そしてゆっくりと身体を持ち上げて身体全体を見渡せる所まで来た。
「あの、有り難うございます」
その子は少女だった、見た目レイと同じか少し年下ぐらいだろう。黒いジャケット、ロングスカートにブーツを履いていた。
「――メル?」
レイが突然キョトンとした顔でそう言った、メルと呼ばれた少女は不思議そうにレイの顔を見る。そして少し悩んだ末に有る事を思い出した。
「もしかして、レイ君?」
「やっぱりメルだ! こんな所で何してんの?」
訳が分からず話がトントン拍子に進んでいるこの状況に全く付いていけない船員は勿論アデルとガズルはレイの顔をしばし睨んだ。
「おい、二人で妙に納得してないで説明が欲しいのだが」
後ろから艦長がゆっくりと寒そうに姿を現した、レイの方に腕を回してそして低い声でそう言った。
彼女は半年ぐらい前に偶然レイが立ち寄った街で知り合った少女で、名前はメルリス・ミリアレンストという。愛称はメル、ノーズフィップ出身の田舎町に生まれた。メルは両親を探して世界中を旅して回って居る途中、最初に述べた街で偶然にもレイと知り合う。そして二ヵ月の間一緒に旅を続けていた。
「ほう、お前さんにそんな経歴があったとはな。俺はてっきりお前ら三人の実につまらない男旅をずっと続けていたんだと思ってたぜ」
大声で笑いながら艦長はレイ達を冷やかした、冗談は止めてくれとガズルが少々ムッとした表情で答えそしてアデルが笑い出した。
「ところで、レイ君は何してるの?」
分が悪そうに苦笑いをしているレイの目の前でそう質問した、レイはとある事情でまた旅をしているとメルに伝える。
「なら、私をレイ君達のパーティーに加えてくれないかな?」
「あぁ?」
アデルが実に面白くなさそうにメルの顔をも見る、余りにも怖いその表情にメルはとっさにレイの後ろに隠れる。
「御免なさい」
「いきなりだな、俺がそんなに怖いか?」
「……御免なさい」
「正直だなお前」
さらに怒り出すアデルにメルは肩をすくめる、その様子にレイが苦笑いをしながら怒るアデルをなだめる。
「まぁまぁ、僕もその意見には賛成だ、それともアデルはこんなか弱い女の子にこんなクソッタレな世界を一人で旅を続けさせるつもりか?」
「同感だ、別に良いじゃないかアデル。俺もレイの意見に賛成。俺はそこまで鬼じゃないし。それに俺達の旅仲間が増えるのはとっても良い事じゃないか、それに女の子だぞ? よく考えて見ろよ?」
「……お前らどっちの味方だよ」
「メル」「当然メルちゃんだろ?」
二人は同時に言った、呆れた艦長が話に割り込む。
「良いじゃねぇかよアデル、よく考えても見ろ。女の子だぞ?」
「だから嫌なんだ、女なんて面倒くさいし鈍くさいし……」
アデルが吠えた、呆けに取られたレイ達はみんなで集まり肩をあわせてヒソヒソと何かを話し始めた。自分だけその輪に入れずに苛立ち始めるアデルは矛先を近くにいた見張り役の船員に向けた。
話が終わるとそこにいた全員は何やら納得してアデルの方に振り向く。
「アデル、一つ聞いて良いか?」
「何だよ」
「お前、女の子を好きになった経験は?」