「イッテェェェェェェェェ!」
アデルだった。あれから二時間ひたすら炎帝剣聖結界を使いながら六幻を習得するべくひたすらそこらじゅうの木々に打ち込み続けた。しかし五連続までは何とか成功するにしてもやはり六幻だけはどうにもたどり着けない、無理もない。いわばカルナックが教える最後の剣技だからである。そう易々習得されてはたまった物じゃない。度重なる右腕の酷使についに悲鳴を上げた。
「だぁぁぁぁ! 音を置き去りにする攻撃なんてどうやったらできるんだよ!」
ドサッと後ろへ倒れこんだ、雪がクッション代わりになり痛みは全くない。
「そうはいってもさアデル、剣聖は目の前でやってのけたんだろう?」
ガズルだった、それだけじゃない。レイとギズーも一緒に外でアデルの特訓を見守っている。二時間ひたすらに打ち込み続けている様子はまさに鬼のようだった。
「そもそもなんで剣聖結界前提なんだ? 速度の問題とは聞いたけど」
ギズーが家から持ってきた椅子に座って尋ねる、背もたれに顎を乗せて両足を開いて座っている。
「単純に速度の問題だけじゃねぇんだ、あの技はいわば音速を超えるんだ。だからこそ音を置き去りにできる、だけどその時の摩擦熱は尋常じゃないんだ。それから身を守る為にも必須なんだと俺は考えてる」
「それを生身でも使える剣聖ってやっぱりおかしいんだな」
ガズルがボソッと呟いた、だが残りの三人はそれに激しく同意する。元々化け物と呼ばれるほどの人間であったカルナックだがその実力は年をとっても衰える気配は全くなかった。
「何かヒントがあるはずなんだ、もう一度アデルが見た様子を話してくれ」