一番下の引き出しから真っ黒な石を取り出した、二人はそれを覗き込むように見る。一変なんてことのない石に二人は見えた。多分その辺で拾ってきたと言っても誰も分からないだろう、二人は何の石なのか分からず同時に首を傾げる。

「これは溶岩が固まった石です。それをこの黒刀と配合させてインストーラーデバイスとして完成させます、本当は腕輪のようなものにすればアクセサリーとしても使えると思っていたのですがアデルには似合わないでしょう」

 レイが思わず吹き出してしまった、確かにかざりっけ一つないアデルの姿にアクセサリーは似合わないと今の一瞬で想像してしまったのだ。当の本人は舌打ちをしてそっぽを向いた。

「さらに炎帝剣聖結界(ヴォルカニックインストール)と抜刀術を組み合わせた技をこの後アデルに伝授します、短時間でどこまで取得できるかわかりませんが覚えておいて損はないでしょう。レイヴンとの勝率を少しでも上げる為にもね」
「新しい抜刀術教えてくれるのか、それは楽しみだ」

 そっぽを向いていた顔はすぐさまカルナックへと向けられた、隣で見ていたレイは思わず声を上げる。

「先生、僕には何かないんですか?」

 不満そうに言った、かたや新しい武器と技の伝授。まだレイには何も伝えられていない。思わずアデルに嫉妬してしまう気持ちも分からなくはない。

「レイ君にはそうですね、正直なところを言いますと霊剣以上な物を君に与えることは出来ないのです。技もあらかた教えてしまっていますし、法術に関しても合格点です。インストーラーデバイスが無くとも多分剣聖結界は発動できるでしょうから……しいて言うなら剣聖結界を覚えてもらう事ぐらいでしか」

 期待の眼差しで見ていたレイだったが、明らかに落胆の表情を隠せなくなってきた。カルナックが言うには霊剣は切れ味強度共に現存する剣の中でもトップクラスに入るであろう業物、それにレイにしか扱えないとなれば彼にそれ以上の物は扱えないであろう。これは修行中にいくつか他の剣や刀を使わせてみた結果から言えることだった。

「先生、その事なんですが実はもう使えたりします」
「はい?」

 思わず黒刀を床に落としてしまった、目を丸くして発言をした張本人を凝視する。何かまずい事を言ったのかとレイが少し硬直する、カルナックのこんな表情を見るのはとても久しぶりだ。まるでハトが豆鉄砲を食らったかのようだった。

「私も耳が遠くなりましたね、エーテルバーストを起こしたレイ君が剣聖結界をそのまま習得してるだなんていやはや。年は取りたくないものです」

「いえ、習得済みです。深層意識の中で炎帝のおじいさんに教わりましたので」

 レイが頭をポリポリと搔きながらそういうとカルナックは固まってしまった、まるで石の様に固まるとそのまま後ろへと直立のまま倒れてしまった。

「先生? ちょっと先生!?」