「えーっと、『お久しぶりですフィリップ君、私の弟子達が君達の所にお邪魔したみたいですね。兄弟子である君としてはどのように目に映ったでしょう? 今度また紅茶を飲みにお邪魔しますのでその時にでもお聞かせください』。フィリップって誰だ?」
「ケルヴィン領主だよ、フィリップ・ケルヴィン。そういえば何か刀受け取ってなかったっけ?」

 アデルは思い出したかのように大きな荷物入れから預かった刀を取り出した、あの時はレイの事で頭がいっぱいだったアデルは渡された刀の存在をすっかり忘れていた。改めてその刀を見てみる。

 鞘はきれいな漆塗り、鍔はついていない。柄は長く三十センチはあるだろうか、鞘から刀を抜くと刃につけられた焼きが見える。とても綺麗でしっかりと手入れされているのが分かる。刃こぼれは一切ない。

「『名刀:雷光丸』、インストーラーデバイスですよアデル」

 突如として声が聞こえた、ドアの方から聞こえたその正体はカルナックだった。埃まみれでアデルが持つ刀をじっと見つめている。

「おはようございます先生、昨夜は申し訳ございませんでした」
「良いのですよレイ君、無事に帰ってきてくれたことが何よりです」

 レイは深く頭を下げて謝った、その速度は速かった。剣が空気を切るような音を出しながら深々と頭を下げるレイにカルナックは無事だったことを優先した。

「それより、フィリップ君がまさか雷光丸を預けるだなんて驚きですね。扱えないのが勿体ないくらいです」
「そんなに凄い刀なのかこれ」

 一度刃を鞘に納めて雷光丸を頭上にかざした、改めて長い刀だとアデルは感じる。自分が持っている刀の二回りほどは大きいだろうか、重さもずっしりとしていてアデルが扱うには厳しいと感じる。