「アデル、感知まで出来るようになったのですか?」
「ん? あぁ、爺さんに教わったんだ。というか爺さん言ってたぜ? カルナックはそんなことも教えとらんのかってさ」
「ハハハハ。教える前に飛び出した弟子にそんな事言われる日がこようとは思いもよりませんでしたよ」
「ぬぐっ……」

 してやったりと思ったつもりだったが逆に痛い所を指摘されてしまう。恥ずかしそうに帽子を深く被りなおしてバツが悪そうにしていた。

「いつまでも面倒見てもらうわけにも行かないと思ってたんだ、仕方ねぇじゃないか」

 アデルがそう呟いた、魔法陣が起動する音によってそれはきっと誰の耳にも届いていないだろう。だがカルナックは薄々感じていた、きっとそうじゃないかなと。アデルの性格を考えればあり得る話だと思っていた。聞こえてはいなくてもそこは師弟であった。

「さぁ、そろそろ結界が解けるよ。レイ君の体誰か押さえてね」

 根元からビキビキと音を立ててヒビが入り始める、一瞬それをみたアデルがギョッとする。氷の中で封印されているレイの体は本当に大丈夫なんだろうかと心配し始めた。

「なぁ、そんなに勢いよくやって本当に大丈夫なんだろうな?」
「あら? 私を信じなさい坊や」

 ニッコリと笑うと注ぎ込んでいるエーテルを一層増やした、するとどうだろう、見る見るうちにヒビは全体に広がり氷が割れた。心配されていたレイの体には何の傷も無く外相は見られなかった。

「よっと」

 氷が割れた瞬間アデルはその場からレイの元へと跳躍して落ちてくる体を両手で抱きかかえた。穏やかな表情で寝息を立てているレイを見てアデルも一安心した。

「さてと、では時間も遅いですし続きは日が昇ってからにしましょう。皆さんお疲れ様です、今夜はゆっくりと休んでください。アデルは朝になったらレイ君を連れて私の元へ来てくださいね」