「それに関しては大丈夫だ、もう何ともないさ」

 平静を装いながら返した、カルナックは何事もなかったように話すアデルを見てもう一度安心する。我が子の様に育ててきた弟子が一つ成長した姿を見て頬が緩む。

「レイは大丈夫なのか?」

 今度はギズーが話しかけてきた、寒そうに両手で自分の両腕をさすって小刻みに震えている。寒いのであれば家の中で暖を取ればいいだろうにとアデルは思ったが、自分がギズーの立場であった時そんなことは出来ないだろうとすぐに考えを改めた。

「さっきも言った通りさ、ちょっと一発殴っちまったけどな」

 右腕を振りかぶってレイを殴った時のそぶりを見せた、するとガズルが思わず笑ってしまった。

「お前は深層意識の中ですらぶっきらぼうなんだな」
「目覚まさせるにはこれが一番だってお前が言ったんじゃないかガズル」
「それはお前に対してだけだ、寝起きの悪い事悪い事」

 二人が笑いながらそんな話をし始めた。会話を聞いていたカルナックはため息を一つついてヤレヤレと首を振った、同じくシトラもそれにつられて微笑む。

「それじゃ、レイ君の結界を解きましょうかね」

 右手に握っていた杖を正面に持ってくるとシトラは詠唱を始めた、氷漬けのレイの足元から大きな魔法陣が出現すると紋章の角に沿って新たに魔法陣が出現する。ここでアデルはシトラのエーテルを感じ取った。今までのアデルからすればシトラが何をしているのかさっぱり分からない状態だったが此度の事件でエーテルコントロールを覚えたアデルには感知できるようになっていた。それでもまだレイの足元にも及ばないだろうその技術。

「すげぇ、エーテル感知が出来るようになると改めて凄さが分かるな」

 その発言にまずカルナックが驚いた、コントロールも真面に出来ずにいたアデルがこんな短期間で感知まで使えるようになっていることに驚愕した。