目を覚ますとそこはカルナックの家の中だった、目だけを動かして辺りがどこかを確認しながらゆっくりと上体を起こす。上半身を起こして二度首を鳴らす、どうやらリビングのようだ。ソファーに寝かされていたアデルはテーブルの上に置かれている自分の帽子を見つける。それを取ると頭に被り立ち上がる、先ほどまでレイの深層意識の中で起こった出来事を思い出しながら再び辺りを見渡す。彼にとって貴重な体験だっただろう、自分の、ましてや他人の深層意識の中で起こった出来事なんて通常ではあり得ない事柄だからである。
「戻ってきたか」
帽子の横に置かれていた自分の愛剣を片手で掴み取ると破壊された玄関へと歩き始める、外にはカルナックを初めとしたダイブ前の面々が揃っている。最初にアデルに気が付いたのはガズルだった、手を振ってアデルの名前を呼ぶと本人も左手を上げてそれに答えた。
「長かったな、どうだった?」
「あぁ、万事解決だ。だけど氷の結界が気になって俺だけ先に戻ってきたんだ、レイには後一時間ぐらいしたら目を覚ます様に伝えてある」
皆の元へと歩きながら話した、両手を組んで結界で封印されているレイを見ていたカルナックは彼の表情をみて安堵する。モノクルを一度右手で掛けなおしてにっこりと笑った。
「おかえりなさいアデル、良くやりましたね」
「大変だったぜ全く、だけど良い体験ができた気がするんだ」
「そうですか、炎の厄災はどうなりましたか?」
右手で鷲掴みにしていた二本の剣を左右の腰に丁寧にぶら下げた。それから帽子を両手で位置調整を行い切れ目がきちんと左目の上にくるように調整する。