「別に俺が人間だろうが魔人だろうが関係ないんだよ、それまでの俺を否定するつもりは無いし今後俺自身がそれについて変わることも無いだろうしな。逆に大量のエーテルを内包して生まれたと思えばラッキーじゃねぇか、剣術以外にも俺には法術の素質もきちんと備わっているって分かったんだ。今後強くなることはあっても弱くなることはねぇだろうさ。それに――」
馬鹿笑いを止めて帽子を取る、すっかり髪の毛の形が帽子の形に変わっている。その昔カルナックから譲り受けた黒いとんがり帽子をじっと見つめてアデルは続ける。
「俺は、おやっさんの子だと今でも思ってる。記憶がない俺を拾って育ててくれた唯一の人だ、だから魔人であって人間なんだと思ってる」
そう言ってもう一度帽子を被りなおした。
「さぁ、続けようぜイゴール。仕込みまだだろ?」
「あ、あぁ……」
その場にいた全員が感じていた、どこか悲しそうなアデルの表情を。きっと無理している、そうに違いない。特にレイはそう感じていた。それは昔からのアデルの癖でもあった。悲しい時や寂しい時に彼は必死に喋って場を盛り上げようとする。そんな癖があったからだ。それでも今回ばかりは無理をしているのが良く分かる、今までレイが見た事のない表情を見たのだ。不器用でどこか兄貴気取り、レイからすれば実の兄にも思える存在であることは間違いない。親族を失ったレイに残されたのはカルナックとアデル、それとアリスの三人だけだったからだ。兄弟の居ないレイからすれば年上のアデルは親友でもあり、兄にも思える存在だったのだろう。そんな彼にどんな言葉を掛けようかと悩んでいるのも事実。だがそれは自分にとっても同じことだった。
馬鹿笑いを止めて帽子を取る、すっかり髪の毛の形が帽子の形に変わっている。その昔カルナックから譲り受けた黒いとんがり帽子をじっと見つめてアデルは続ける。
「俺は、おやっさんの子だと今でも思ってる。記憶がない俺を拾って育ててくれた唯一の人だ、だから魔人であって人間なんだと思ってる」
そう言ってもう一度帽子を被りなおした。
「さぁ、続けようぜイゴール。仕込みまだだろ?」
「あ、あぁ……」
その場にいた全員が感じていた、どこか悲しそうなアデルの表情を。きっと無理している、そうに違いない。特にレイはそう感じていた。それは昔からのアデルの癖でもあった。悲しい時や寂しい時に彼は必死に喋って場を盛り上げようとする。そんな癖があったからだ。それでも今回ばかりは無理をしているのが良く分かる、今までレイが見た事のない表情を見たのだ。不器用でどこか兄貴気取り、レイからすれば実の兄にも思える存在であることは間違いない。親族を失ったレイに残されたのはカルナックとアデル、それとアリスの三人だけだったからだ。兄弟の居ないレイからすれば年上のアデルは親友でもあり、兄にも思える存在だったのだろう。そんな彼にどんな言葉を掛けようかと悩んでいるのも事実。だがそれは自分にとっても同じことだった。