「お主には前にも一度言っておるな、お主のエーテルは人間のそれを遥かに凌駕すると。あの時儂には確信がなかったが今ならわかる、イゴールがお主のエーテルに違和感を感じたことがその答えじゃ」

 ゆっくりとアデルの元へと歩き出した、それをじっと睨み続けるアデルに対し炎帝は臆することなく近づいてくる。レイは何が何だかさっぱり分からないでいたが炎帝の一言で気が付いた。

「待ってくださいご老人、まさか」
「そうじゃ、こやつはおぬしと同じ――」

 両手を後ろに回して腰を押さえながら歩き、アデルの前で止まって顔を見上げた。しっかりとアデルの目を見つめて。

「魔人じゃよ」

 その場全員に聞こえるようはっきりとそう告げた。その言葉を黙って聞いていたアデルは眉一つ動かさなかった。そして突然として笑い始める。

「ハハハハハ! なんだ、そんな事かよ爺さん」
「なんじゃと?」

 突然笑い始めたアデルに炎帝は拍子抜けする、深刻に受け止めるだろうと思っていたことが大きく外れた。別に脅かすつもりはなかった、しかし真実を告げた時アデルが一体どんな反応をするのかは分からなかった。それがこんな結果になるとは誰が予想していただろうか?

「わりぃな爺さん、薄々感じては居たんだ」
「お、お主何時からじゃ!」
「俺の中で爺さんと喋ってた時さ、人間が持ち合わせていないエーテル量だとかなんとかって言ってた時にまさかとは思っていたんだ。だけどイゴールと爺さんの反応を見て確信したよ」

 ケロッとした表情でアデルは笑っていた、だがその表情には少し寂しさのようなものも浮かんでいる。レイはそれを見逃さなかったが、あえて口を紡ぐ。