イゴールが右手を伸ばしてアデルの帽子の上に手を置いた、するとゆっくりではあるがアデルの体内に知らないエーテルが流れ込んでくるのが分かる、先ほどまで禍々しいまでのオーラを帯びていたエーテルだったが今はとても穏やかで静かなものだとわかる。それと同時にイゴールのエーテルに驚愕する。多少のエーテルを流し込むと言っていたが今まで自分では感じることのないほど大きな力だった。それにアデルは唾を飲む。

「――っ!」

 突然イゴールが手を放した、同期させる為にアデルのエーテルを少しだけ吸った直後だった。驚きと戸惑いがイゴールを襲う、何が起きたのか他の四人には分からなかった。

「まさか、君も――」

 そこまで言いかけてその先を躊躇った、自身の思い違いなのかもしれない。だがそれははっきりと確信に近いものがあった。イゴールは感じ取っていた、アデルのエーテルの本質を。ここで炎帝がそれに気づきイゴールが言おうとしていた言葉を口に出す。

「お主も感じたか、アデルのエーテルに」
「ヴォルカニック殿、しかしこれは」
「魔人である貴様が感じた事じゃ、間違いじゃないようだのぉ」

 二人はアデルを間に挟んでそう話した、当の本人は前と後ろを交互に見ながら舌打ちをする。その表情からは見て取れるほどのいら立ちが分かる、先ほど炎帝と痴話喧嘩をした時とはまるで違った。

「俺のエーテルがなんだ、二人だけで何納得してんだか知らねぇけど言いやがれ!」
「吠えるな小僧、貴様の素性が分かったと言っておるのじゃ」
「俺の素性だ?」

 横目で炎帝を睨んだ、炎帝は微動だにせずこちらをにらんでいるアデルをじっと見つめていた。一度空を仰ぎ大きく深呼吸をする。