その声は遠く、ずっと遠くまできっと届いていただろう。無念のまま死んだ仲間達へ届くような気がする。草原は広く広く遠くまで広がっている。見渡す限り地平線のその景色の中で彼らはイゴールの決意を受け取る。封印されて千年、どれだけの苦痛がイゴールを襲ったのか、それは彼等には分からなかった。それでも今は少し分かるような気がする。特にレイはその感情に涙する、彼もまた同じであった。その涙の理由はまだ彼には分からないだろう。小さなレイが抑え込んでいる記憶がいずれ本人の帰ってきたときにそれが分かる。その時までは――今はまだ。
 因果とは時に残酷なものである、時代さえ違えどレイとイゴールは似たような境遇だったのかもしれない。お互い帝国に大事な者を奪われ、その者たちを自らの手に掛けている。数奇な運命とはよく言ったものだ。だからこそ彼らは魅かれあい、こうして一緒になったのかも知れない。

 帝国――それは遡ること二千年以上前から続く武力国家である。いつの時代も世界を思いのままに操ってきた巨大な組織。しかし設立当初は今のような姿ではなかったと伝わる。それを知る者はこの世になく、古い書物の中で書かれてきた嘘か本当か。今となっては調べることも真意を知ることもできない。だが少なくとも千年も昔から続く独裁世界にこの世界は疲弊しきっていた。各地で反乱が起こり戦争が始まる。そんな現代に彼らは終止符を打とうとしている。まだ小さな少年少女達だが心に抱くのは大きな思い。たったの数人でどこまで帝国に抗うことが出来るのかそれはまだ分からない。分からないからこそ強くなる必要があると彼らは常々考えていた。反帝国が根強い東大陸の英雄の名前を借りた反乱軍、FOS軍はこれからもまだまだ強くなるだろう。誰に求める事の出来ない暴走列車を止めるべく彼らはその先を目指し始めていた。