「僕がこの黒いおじちゃんの事見張っとく! だから大丈夫!」
「大丈夫たってお前」

 小さなレイがアデルの元へと歩いてきた、そしてレイの手を握る。二人は顔を見合わせて頷きアデルを諭す様に続ける。

「元はと言えばこの子の提案なんだ、直接頭の中に声が流れ込んでくるような感じで話しかけてきてさ。きっとこうするのが一番良いって。僕自身迷ったけどどうしてもっていうんだ、きっとこの子なら何とかしてくれると僕は信じる」
「と言ってもなぁ……どうするよ爺さん」

 困り果てたアデルが炎帝へと尋ねる、暫く成り行きを見守ってきた炎帝が突如として笑い出す。大声で笑い両手を叩く。

「好きにさせればえぇ、こやつももう何もできんだろう。それに」

 チラッとイゴールに目配りをする、当の本人は何が何だか分からないでいた。目の前でしゃべるこいつらは一体何を言っているのだろうと終始あたふたしている様子だった。

「仇討ちって言うのは本人がやるべきことじゃ無かろうかのぉイゴール?」

 一筋の光が見えた、イゴールの失った目にそれは確かに映っていたと思う。流すことのできない涙を流し、目の前にいる者達に感謝し、その場に崩れた。同胞たちの無念を討てる、それもこの手で。二度と仲間達の仇討ちなんて出来ないだろうと思っていたところに見えた一筋の光。まさに希望の光だった。

「私は――」

 アデルも他の三人の意見にため息をついて観念する、そして後ろを振り向き崩れ落ちて震えているイゴールを見る。後悔などはもうしない、それはレイ達が決めた事だと言い聞かせ。

「私は、一矢報いたい! 我らが同胞の敵を倒したい! それが例え大隊でも――いや、一人でも!」