アデルがレイの深層意識の中にダイブしてから一時間、カルナック達は外で暖を取っていた。深々と降り続けていた雪は次第にその勢いを弱めていた。ふと家のほうに目をやると今回の損害が良く分かる。玄関は破壊されそのまま今が見えている。その先は無事だが垣根も何も粉々に破壊されていた。いや、これだけの被害でよく済んだものだと逆に感心する。
 一度エーテルバーストを引き起こした者は以前の力とはかけ離れた力を保有する。人としてその姿を保っていた事、完全に暴走する寸前で事を食い止めた事、何をとっても偶然の産物に過ぎない。かの英雄、剣聖の力をもってしても抑える事の出来なかったレイの暴走。今まで彼が見てきた暴走の中でも遥かに破壊力を誇っていた。仮にアデルの目覚めが少しでも遅かったらと考えると、ゾッとする。

 予想外の事態が次々と起こる中、カルナックは考える。このまま彼らを行かせていいものだろうか、現状剣聖結界を使用できるのはアデルただ一人、レイはおそらく今回で習得することはできないだろう。その事をこの一時間ずっと考えていた。今後予想される戦いについて、もっと多くの事を教えておくべきことがあった。それを若さ故に教えることを躊躇ってきた自分に多少なりの後悔を抱いていた。