あれから数分、彼等は焦土の景色へと戻ってきていた。
 アデルは地面に突き刺さったグルブエレスを引き抜きそれを鞘に納める、厄災はあれからずっとどこか遠くを見ているかのように一点だけを見つめている。動かずただひたすらと遠くの一点だけを見つめていた。

「終わったのか小僧」

 体の動きを封じられていた炎帝が突如として動き出してアデルに問う。それに対して首を横に振って静かにアデルは答えた。

「イゴールのほうは終わった、後は逆光剣でこいつを消し去れば俺のミッションは終了だと思うけど」

 視線をずっと立ち尽くしているレイ本体へと移す、微動だに動くことなくそこに立っている。

「その前にレイをどうやって正気に戻すか」
「何じゃと?」
「仮に今イゴールをレイの体から除去したところで本人がこの状態じゃ廃人と同じだと思うんだ。魂の無い抜け殻みたいな状態になっちまう」

 ゆっくりとレイの元へと足を運ぶアデル、ずっと怯えていた小さなレイはやっと正気を取り戻して泣くのをやめた。その小さなレイを炎帝が介抱し抱きかかえる。

「多分こいつは、イゴールに見せられたあの記憶をそのまま真正面から受け止めちまったんだ。まっすぐな性格してるだけあって多分トラウマにも似たものを植え付けられたんだと思う。それから自分自身人間の事を信じられずに自身暗鬼になって塞がっちまったんだろう」

 それは異常なまでにレイの心境を獲ていた。何故アデルがこうまでもレイの現状を把握できたのか、それは再起動にある。厄災の記憶に再起動を掛けた時、互いの深層意識がリンクしてる厄災とレイの心の中を同時に覗くことができた。正しくはレイの意識が流れ込んできたと言えば正しいだろう。