「いずれも発症するのは未成年の子供に多く、稀に大人へと感染する。大人に感染すると最後、ウィルス自体が進化を初めて大人にまで感染拡大が始まる。だから感染した子供は一か所に集めて焼くしかなかった。それは人間の子供も同じだ!」

 掴みあげられたアデルは厄災を睨みながら続ける、本人は一切気づかなかった事実を告げそのまま続ける。

「テメェが見たのは確かに魔人の子供が焼かれるその現場だ、お前も当事者だ。でもな、あの積み上げられた魔人の子供たちの下に元からいた人間の子供も居たんだ! 最後にやってきたお前には分からなかっただろうがな!」

「人間があそこに? 馬鹿馬鹿しい、あそこには我等魔人しかいなかった! 人間など一緒ではなかった!」
「じゃぁもう一度見てみろ! お前が見逃した事実を俺が付きつけてやる!」

 アデルを掴んでいる厄災の手を振りほどいて地面に落ちる。喉元を圧迫されていた為かアデルが咳き込んだ、地面に落ちた衝撃で帽子が脱げていた。足元に落ちた帽子を被りなおしてまっすぐと厄災を睨む。右手に持つグルブエレスを逆手に持ち替えると体の正面に持ち、手を放す。

再起動(リブート)

 地面にグルブエレスが刺さるとそこから光があふれる、逆光剣だった。カルナックがレイ達に使った深層意識の中へとダイブする時に使ったもう一つの使い方である。逆光剣には主に二つの使い分けがある、一つは目くらましと同時に相手の深層意識に干渉し一時的に動きを封じる効果。もう一つはこの深層意識の中へ直接ダイブする手法である。
 光は焦土の世界を瞬く間に包み込んだ、その光にその場にいた全員が目を眩ます。厄災の視力が回復した時そこは再び厄災が見せたあの世界だった。だが状況が異なる。時間の流れはぴたりと止まっていた。

「テメェが人間を恨む気持ちは分かったつもりだ、だけどな」