違和感は次第に確信へと変わり始める。アデルが感じていた違和感は主に二つ、一つは何故殺すのに火を使った方法を取ったのか。単純に不治の病に掛かったとはいえ動けなくなるまで酷使し、その後動けなくなれば捨てればいいだけの話。それを何故火をつけて殺すという手段を取ったのか。
二つ目はそこに魔人以外の子供が混じっていることだった、厄災は多分気が付いていない。その多くは魔人の子供だったからかも知れない。数人の人間の子供も一緒に混じっている、それが猛烈に違和感を感じていた。厄災が見せてきた記憶では奴隷として仕事を強制的に行わせてきたのは魔人の子供だけ、そこに何故人間が混じっているのだろうか。また、魔族の子供はその中に存在していない。それも違和感の一つでもあった。
その後、厄災が封印されるまでの一部始終を見せられたアデル達は再び焦土が広がるレイの記憶の中に戻ってきた。体を拘束していた厄災の影も消え動けるようになっていた。つっかえが外れたように炎帝と小さなレイは崩れ落ちて地面に膝をつく。
「あ――あぁ――あぁぁぁぁぁぁ……」
「少年には荷が重すぎたかな? 一度ならず二度もアレをみたんだ、もう二度と戻ってくることも無いだろう」
小さなレイが頭を抱えてその場に蹲る、それを見ていた厄災は再び大きな声で笑い始めた。その姿を見た炎帝が急いで小さなレイへと駆け寄ろうと。が、再びその体がぴたりと動きを止める。
「イゴール――貴様っ!」
「ご老人は動かないで頂こう、もう少しで私の目標は完遂するっ!」
炎帝の体の周りには黒い影が渦巻いていた、厄災が再び炎帝の動きだけを止めていた。そしてゆっくりとアデルのほうへと体を向けると笑顔のまま続ける。