「此処はどこだろう、僕は一体何をしているんだ? 確かアデル達と一緒に先生の家に帰って剣聖結界を伝授してもらう為に……あぁ、そうだ。確か瑠璃の話をした後先生を説得するために部屋に入ったんだ。それから~――あまり覚えてないな、気が付いたら辺り一面にだだっ広い草原があって。なんだか良く分からない」
「そうだ、イゴールと話をしたんだ。何の話だっけな。覚えてないや……でもとても憎かった気がする。誰が憎かった? イゴールの事が憎かったんだっけ? 何で? イゴールとは初対面のはずだ、なんであいつを憎むんだ? わからない、そうだ。確かイゴールの記憶を見たんだ、とても酷い記憶だった。そうそう、イゴールが憎いんじゃない。人間が憎いんだ。あいつにあんなことをした人間が憎いんだ。ひっそりと暮らしていた彼等に突如戦争を吹っ掛けた人間が憎い、彼らをぼろ雑巾みたいに扱った人間が憎い」
「あれ、そうすると僕自身も憎いのか? 人間でいる僕自身が憎いのかも? 自分が憎いって何だろう。そうだ、人間の事が憎い、僕自身憎い。じゃぁアデルやギズー、ガズルにメルも憎い」
「あぁ――そうか。友達が憎いんだ、僕がこうして苦しんでいるのに誰も助けてくれないあいつらが憎い。なんで僕だけがこんな目に合わなくちゃいけないんだ、でもイゴールに任せておけば全部やってくれるんだっけ? じゃぁ僕は何もしなくていいや。イゴールだけが僕の事を分かってくれる、憎しみを分かち合う兄弟みたいな感じだなぁ。兄弟がいればこんな感じなんだろうなきっと」