アデルがとっさに鞘から剣を引き抜きレイの正面に立つ、発射された弾丸を剣で弾こうとするがそれはすり抜けてレイの頭部へと着弾した。

「っ!」

 着弾した弾丸は頭蓋骨を破り反対側から抜けていく。大量の血が噴き出しレイはその場に倒れた。死んだのだ。帝国兵はそれを見てニヤリと笑うとそのまま力尽きてしまった。

「レイ!」

 振り返り撃ち抜かれて死んだレイの体を見た、だが異変が起きた。撃ち抜かれ噴き出した血はゆっくりとレイの傷口へと戻っていく。すべてが体の中に戻ると破壊された頭部が再生していく。

「どうなってやがる」

 ゾッとするその状況に思わずしりもちを付いた。そしてバネの様にグンとレイの体は起き上がる、右手に持っている霊剣を落としゆっくりと空を見上げた。その瞳に光は宿っていなかった。
 暫くそのままでいたレイだったが、糸が切れたかのように突如として地面に倒れこむ。そこへ若きカルナックがやってきた。



 その後暫くアデルと炎帝は動くことができなかった。
 時間にして二時間、目の前で同じ光景が繰り返されてきた。まるで何かを訴えてくるかのようにそれらを二人は見続けた、頭がおかしくなりそうだった。
 それもそのはず、何度となく繰り返される虐殺とレイの暴走。最後はレイが頭を撃ち抜かれて死ぬ様子が繰り返し繰り返し流れている。目を閉じ耳を塞いでも直接頭の中にそれが流れてくる。幾度となく繰り返されるケルミナの虐殺を二人は見続けさせられた。

「レイは――これを何度も」
「いや、本人は覚えていないじゃろう。深層意識の中に封印された記憶じゃないかのぉ」

 気が狂いそうになるのを理性で押さえてアデルと炎帝は喋った、しかしまともにそれを受けれいてしまえばきっと崩れてしまう。恐怖すら覚える景色だった。