「何じゃ、一体何が起きた!?」

 炎帝が叫ぶ、アデルも何が起きたのか理解できていない。だがそれは次第に動き出した、今までの時間の流れよりもかなり遅く周囲が動き出す。そして泣き叫んだ少年がユラリと動き始める。

「なっ!」

 一瞬ゆらりと動いた少年は次の瞬間、尋常でない速度で高速移動した。右手に霊剣をもって瞬時に帝国兵の元との距離を詰める。それを視界にとらえるのが精いっぱいだった二人は後ろを振り返る、ゆっくりと動く周囲の状況に対しレイは高速で霊剣を振るっている。その小さな体からは想像もつかない速度と力で帝国兵士を次々に切り殺し、戦車を一刀両断にする。切り殺された帝国兵士は自分たちが死んでいることも多分理解していないだろう。ほとんど殺されていた村人達は生き残っているものが数名いるが、それもすぐに死体へと変わる。暴走していると言えば聞こえは良いだろうが余りにも無残な方法で次々と無差別に攻撃をしている。しかしここでアデルは疑問を抱いた。出会った頃のレイにここまでの戦闘力はない、一緒にカルナックの下で修業を積んでいる彼だからこそそれを理解している。しかし目の前で起こっている出来事はなんだ。

 破壊できるもの、生きているものを全て切ったレイの体がピタッと止まる。そして時間の動きが元に戻った瞬間破壊された戦車が次々と爆発していく。爆風を纏い村にある家々を吹き飛ばし死んだ者たちを焼いていった。先ほど見た焦土の答えがこれだ。

「この――ガキっ!」

 一人だけ生き残りがいた、帝国兵士だ。帝国兵は爆風で吹き飛ばされた後地面に叩きつけられてなお意識を保っていた。立ち上がりシフトパーソルでレイの顔に狙いをつけて引き金を引いた。

「やめろ!」