アデルが噛みつく、当然と言えば当然だろう。大昔に封印された物が何故現代の人間に封印されているかを疑問に持つことは至極普通の事だと思える。

「大昔の封印です、それが時代と共に緩み精神だけが封印から抜け出してしまったらどうでしょう。それが運悪くレイ君に当たってしまったと考えるなら――」
「すまない剣聖、ちょっといいかな?」

 二人の話を聞いていたガズルが急に口を挟む、今のカルナックの話を聞いて疑問に思ったことがあった。

「今の剣聖の話だと精神がレイに宿ってしまったと仮定した話だよな、なら精神に干渉する逆光剣でそれを除去することはできないのかな?」
「無謀な話ではありませんが現実不可能でしょう。あまりにも深い処まで潜り込まれていた場合逆光剣の効果でもそこまで到達できません、深層意識の中から直接取り除かなければなりません。レイ君が炎帝剣聖結界(ヴォルカニックインストール)を使ったことで厄災は深層意識まで確実に潜り込んでいると思われます」

 淡々と説明する、だがガズルはその話を聞いてニヤッと笑う。そしてアデルの首に手をまわして寄りかかる。

「アデル、お前の力で剣聖の意識をレイとリンクさせることはできるか?」
「いや、俺じゃそこまでは出来ねぇ。おやっさんならできるだろうけど」

 そこまで聞いてカルナックもガズルの話の意図を見出した、レイに向けていた刀を今度はアデルへと向ける。剣先が自分の顔すれすれまで伸びてきてアデルは驚く。

「な、なんだよおやっさん。人に刀向けるんじゃねぇ!」
「ガズル君、君は天才ですね」
「これでも飛び級で大学まで卒業してるんでね」

 二人は笑顔でそう言葉を交わす、そこでようやくギズーが話を理解した。続いてシトラも理解したようで笑顔を作る。三人はアデルの体を掴むと離さないようにギュッと抱きしめる。

「え、何々?」

 アデルはまだ話の意図を理解していなかった。ガズルはそれにため息を一つついて説明を始める。

「良いかアデル、任務は簡単だ。剣聖がお前とレイの深層意識をつなげる、お前はレイの意識の中に飛び込んで炎の厄災だっけ? その精神を除去してレイを開放する。それだけだ」

 そこまで説明されてようやくアデルも話を理解する。だが何故今自分が雁字搦めに三人に掴まれているかわからない。

「話は分かったけど、なんで俺こんなに動けなくなるぐらい掴まれてるの?」

 カルナックが笑顔で刀を振りかぶり逆光剣の準備を始める、十分にエーテルを充填すると再びアデルの前に刀を持ってくる。

「あなたが気絶しても大丈夫なように支えてるだけです、さぁ――レイ君を救ってきてください」

 そこまで言うとアデルの目の前でカルナックの刀が光り輝き、それを目にしたアデルは再び深層世界へとダイブした。