カルナックが思わずそう零した。法術の強さを一段上げた剣聖結界ですらその障壁を破ることができずにいる。ここまで強固な障壁はカルナック自身でも作り上げることはできないであろう。まさしく鉄壁、絶対防御と呼べるほどの代物であった。

「しまった!」

 レイを覆い被る障壁をどうにかして破壊したいカルナックはその脆弱な処を探していた。だがそこに一瞬の隙が生まれる。ほんの一瞬霊剣から目を離した瞬間、カルナックの刀は左斜め下から振り上げられる霊剣によって弾かれてしまう。刀は空中に高く舞いカルナックの手から離れる。振り上げられた霊剣はそのまま体を回転しながら今度は左から横いっぱいに振りかぶられる。遠心力を利用して力任せにカルナックの体目がけて刃が襲い掛かろうとしていた。

「させるか!」

 刀が弾かれるのを見たアデルはすぐさま立ち上がりグルブエレスとツインシグナルを互いに交差させる、刃同士を少しだけ接触させるとそこからおびただしい量の熱量が発せられる。その熱量は高温になり一瞬にして辺り一面を光で包み込む。

「逆光剣!」

 カルナックが使った技だった、もともとアデルが思いついた我流奥義。ほんの一瞬相手の目を眩ませるだけでいい、その間にカルナックが体をひねる等して霊剣をよけてくれればそれでいい。そうとっさに思いついた行動だった、だがそれが思わぬ結果を生み出す。
 逆光剣によって放たれた光はその空間を照らし出すとレイの体に覆いかぶさっていた剣聖結界をほんの僅かだが取り払うことができた。同時にレイの動きもぴたりと止まる。カルナックはそれを見逃さなかった。

「アデル、もう一度逆光剣を! シトラ君ももう一度封印の準備を!」

 振りかぶられた霊剣はカルナックの鼻先数ミリの処で空を切る。再び動き出したレイは先ほどと異なり動きが鈍くなっているように見えた。

「早く!」