氷漬けになったレイはものの数秒と絶たずにその氷を壊した、その姿を見たアデルはホッと息をつくのもつかの間聞いたことのない親友の咆哮を耳にする。

「っ!」

 思わず耳を塞ぎたくなるような咆哮だった、身の毛がよだつ様なその叫び声に親友の面影は見えなかった。揺ら揺らと揺れながら感じた事のないエレメントを漂わせるレイにアデルは戸惑い少し怯える。

「――っ!? やめろおやっさん!」

 一瞬の出来事だった、無意識のうちに深層意識の中で繰り返し行った炎帝剣聖結界(ヴォルカニックインストール)を行う。本能のままに剣を構え二人の間に割って入るかのように跳躍する。現実世界でアデルが初めて剣聖結界を使った瞬間だった。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 三度咆哮が響き渡る。その声はレイの透き通った声ではなかった、まるで獣。人ならざる者、野獣の咆哮にもよく似ていた。次第に体全体に黒い瘴気をただ様になる。その姿を見たカルナックは確信する。

「ここが、彼の旅の末路ですね」

 カルナックは一度刀を鞘に納めると法術のギアが一段上がる、今まで誰も感じた事のない量のエーテルがカルナックの体を覆う。雷光剣聖結界(ライジングインストール)を帯びた体はスパーク現象を起こし近くにあった木々にカルナックの体から雷が襲い掛かる。

「恨むなら恨みなさいレイ君」

 レイが大きく霊剣を振りかぶるとカルナック目がけて走り出した、それに続くようにカルナックは居合の姿勢で瞬時に近づく、先ほどより速い速度で。
 霊剣が振り下ろされる前に先にレイの懐に入る、そして神速の如き速さで刀を引き抜きレイの首を跳ねようとした。しかしその刀は鞘から放たれた処で急に動きが止まった。アデルだった。