隊長と呼ばれた大柄で髭面の男が奥の方から出てきた。
「お前達か、俺の大切な部下をこんな風にしたのは?」
大男が手に持っていた何かをレイ達の目の前に放り投げた、それは今朝方アデルが切り飛ばした帝国兵の首だった。
「あぁ、俺がやった。それが何か?」
「なにかじゃねぇ! 帝国反逆罪でお前達を全員逮捕する」
大男が大声でそう言うと三人は一度キョトンとした後一斉に笑い出した。レイはお腹を抱えて、アデルは帽子で顔を隠し、ガズルは涙ぐみながら大男を指さしながら。
「この野郎、かまわねぇ。引っ捕らえろ」
命令を合図に一斉に三人に飛びかかる、一人目がレイに飛びかかった瞬間その兵隊は勢いよく後ろの方へと吹き飛ばされた、回し蹴りだ。吹き飛ばされた兵隊に巻き込まれるかのように何人かは一緒に吹き飛んでいた。
アデルとガズルはそれぞれ左右へと跳躍しアデルは剣を抜いた。
「「俺達をどうするって?」」「僕達をどうするって?」
三人同時にそう叫んだ、レイもアデルから霊剣と呼ばれた剣を幻聖石から本来の姿に戻し戦闘態勢へと移る。大男がまた一つ命令を下すと持っていたショットパーソルを構えて狙いを定めてこちらに撃ってきた。
レイは霊剣で弾き、ガズルは手から放射される不思議な空間でその弾の部質をゆがめさせアデルは普通に避けた。
「レイ! 俺がどれだけ強くなったか見せてやるぜ!」
アデルは低い体制で両手に剣を構え瞬時に逆手に持かえ、狙いを定めて一気に前に走り出すと一人の兵隊に左から斬檄を放つ、一閃、また一閃と次から次へと斬檄を放ち兵隊の意識がなくなったことを確認した後にその兵隊を思いっきり吹き飛ばした。
後方へと吹き飛ばした後左手に赤く燃える炎が渦巻き始めた、それを両手で弾き前方へと飛ばした。その火球は綺麗なアーチを描き辺り一面を焼き払った。
「燃えちまいな!」
すかさずガズルが左手にあの黒い空間を歪ませた。
「レイ! お前の力を見せてみろよ、そうすれば少しは長く旅が出来るかも知れないぜ?」
ガズルが唆すようにレイに挑発をする、レイは「分かった」と一言だけ呟いた、ガズルはその拳を天高く突き出すと歪んだ空間は帝国兵を一つにまとめて空へと舞う、するとレイの顔つきが一瞬変わった。
霊剣を横に構えて体制を低くし、足場をしっかりと確かめると左を添える、横一杯に振りかぶると霊剣に風が集まりだした、その風は次第に大きくなり渦を巻きレイのジャケットがばたばたと大きく暴れる、その風と会話をするかのようにレイは笑った。
左肩に霊剣の柄の部分を乗せ大きく上からたたき込むように剣を縦に一閃する。
「突風剣」
渦を巻いた風はその剣からは離れると空に浮いている帝国兵達に向かってスピードを上げて迫っていく。その風は辺りの砂を巻き込み目に見えるほどの竜巻がそこに出現した。
竜巻は轟音と共に兵隊達を上空の彼方へと吹き飛ばした。
「……ほぇ」
ガズルの開いた口がふさがらない、右手で頭の帽子を押さえたままその体制で立っている。アデルは相変わらずだなと言わんばかりに呆れた顔でレイを見ていた。
「どうガズル? 僕の力少しは認めてくれた?」
「呆れた奴らだ、お前とアデルはそろって化け物か!」
その慌てぶりにレイとアデルは笑い出した、すべてはカルナックの教えであることも知らずにガズルは何に対して笑われているのかが一行に掴むことが出来ずに理不尽な表情のままアデルとレイを追いかけだした。