単純な殺し合いであれば尚の事である、動けない相手に剣を振るうだけで簡単に殺せるだろう。首を跳ねるもよし、心臓を一突きにするもよし。色取り取りだ。だからこそアデルは倒れそうな体に鞭を入れ、歯を食いしばりギリギリのところで意識だけは保とうとしていた。

「そんなに連続で行えば体に無茶も来るだろうて、少し休憩してはどうじゃ?」

 炎帝が手を差し伸べる。だがアデルはそれを頑なに拒んでいた。

「いや、今ここでヘバッてるわけには行かないんだ。普通の人よりコントロール技術が落ちぶれている以上並の努力じゃ追い付けねぇ、必ず追い付かなきゃいけない奴がいるんだ」
「お主のいう仲間か」
「あぁ、あいつも今は同じようなことをやってるだろうさ」
「そうじゃな、向こうも今頃は――なんじゃ?」

 炎帝が急に空を見上げる、真っ暗だった空間に目に見えてひびが入っているのに気づく。

「なんだあのヒビ」

 アデルも同じようにして見上げた、ほんの小さなヒビが一か所亀裂の様に入っていた。二人が不思議そうに眺めていると突然亀裂が大きくなった。

「!?」

 ビキビキと大きな音を立てて亀裂がそこら中に入り始める、天井どころか左右、足元にまでその亀裂が迫ってくる。

「お主何をした!」
「何もしてねぇって! 何が起きてんだよこれ!」

 二人が怒鳴りあう、その間も音を立てて亀裂が広がり続ける。周囲全てに亀裂が入った後、突如として天井が崩れはがれていく。

「ぐぅ……」

 炎帝が声を上げて苦しみ始める、それを聞いた炎帝に手を差し伸べる。苦痛に表情を曇らせながら右手で頭を押さえていた。

「どうした爺さん!」
「このエーテルは――何故じゃ、何故奴が今頃になってっ!」
「なんだよ爺さん、何が起きてる!」