炎帝はそこまで言うと口を閉じた、今まで厳しい表情をしていた炎帝は一度だけそれが緩む。どこか懐かしくどこか寂しいような。そんな表情だった。

「そんな事より集中せい、こんな所で躓いていたんじゃ現実世界で通用できんぞ」
「わかったよ爺さん、そう小言を言うなって」

 足元で吹き出し始めた炎は一気に火柱となりアデルを包み込む。渦を巻き灼熱の炎となってその姿が乱れる。火柱の根元からはさらに炎が噴き出し、業火となって巨大な火柱を作り出す。

(不思議なもんじゃ、これほどまでに大量なエーテルを貯蔵しているにも関わらずこれほどコントロールが苦手とはな。本来であれば立派な法術士になれただろうなこやつは……この貯蔵量は人にあらず)

 巨大な火柱が突如として消滅し始める、まるで服の糸が解けた様に姿を保つことができなくなっていった。その中央、アデルは息を切らしながら両手を膝についていた。

「お主、それほどまでに大量のエーテルを所持していて何たる様じゃ」
「あ? 俺は元々エーテル量が少なくコントロールも出来ねぇよ。だからこうやって剣の道に進んでるんじゃねぇか」
「否、お主の貯蔵量はまるで人のそれにあらず。わからんのか? 並の術者でもこれほど貯蔵はしておらん」

 アデルは首を傾げた、過去にカルナックから言われた一言が脳裏をよぎる。一般の旅人並の貯蔵量で本来なら法術を使うことすら困難であると。故にアデルが使用できる法術も簡単なものばかりだった。教えられた法術ということもあるが。

「お主、何処の出身じゃ?」

 炎帝は問う、稀に人間の中に類まれな法術士が生まれる地域がある。西大陸の一部限定ではあるが膨大な貯蔵量を持って生まれるものがいる、その大半は歴史上に名を遺す賢者にまで上り詰める程の術者であることも。

「悪いな爺さん、それは知らないんだ」