『この星で、最後の愛を語る。』~The Phantom World War~

 戦争は魔族の一方的な戦いから均衡し始めた。だが人間は魔族より数が多く、最終的には物量で魔族側が敗退する。じわじわと人々が西大陸へと上陸し始めるころ、魔族は生き残りを連れて森の奥地へと散り散りに逃げていった。それから程なくして魔大陸最大の貿易都市は無抵抗で攻め込まれ人間の植民地へと変わった。同年、魔大陸の大部分を支配した帝国部隊は独立を宣言する。

 中央大陸にある帝国本部はこれに激怒した、表向きは人々から脅威を取り除く戦争ではあったが魔大陸には膨大な資源が眠っている。半分はそれが狙いでもあった。しかし突如として独立を宣言した部隊は新たに国家を作り武装強化を行う。

 翌年、独立国家と帝国との間で激しい戦争が始まる。その戦争から逃げ延びた人々が先の集落を始めて作り出した。魔族からすれば人間は突如として現れた敵である、だが彼らも馬鹿ではなかった。もとより仕掛けられた戦争ではあったがそれは軍人、一般市民となれば和解できると確信していた。その根拠は長年の貿易実績で得られた昔の信頼でもあった。

 しかし、そう簡単に話は運ばなかった。魔族の知る貿易時代の人間はもう人々の記憶にはない、今の彼等は魔族イコール人間の脅威とだけ見られていた。そんな中、逃げ延びた人々の中に考古学に詳しい学者の姿があった。彼は人々を説得し共存の道を開く。お互いがお互いの事を尊重し、共に築き上げてきた物。それは新しい信頼関係であった。

 共存が始まって数十年、人と魔族の間に子供が生まれ新しい種族が誕生していた。名を魔人という。外見、成長スピードは人と何ら変わりはないが貯蓄するエーテル量が人のそれを圧倒的に凌駕した。