「何故僕の中にいる!」

 殺気はなかった、鼻につく焦げた匂いだけが異様なまでの不快感を示す。

「わからぬ、気が付いたら少年の中にいたのだ」
「僕をどうするつもりだ?」
「何も、この焦土の記憶(せかい)の中で少年の瞳から世界(ゆめ)を見ていた」

 突然突風が吹いた、砂埃が舞い二人の間を駆け抜ける。レイは右腕で顔を守り砂嵐が収まるのを待った。視界が開けた時はまた別の景色が広がっていた。辺り一面真っ暗闇だが小さな無数の光がはるか遠くで光って見える。だがお互いの事はよく見えている。地面の感触は一切ない、浮いている感じがする。

「少年、力は欲しくないか?」

 辺りを見渡していたレイはその言葉に振り向く、相変わらずニッコリと開いた口がそう言った。

「少年の目からあの世界を見てきたから分かる、力が欲しいのだろう少年」
「お前みたいな魔人の力なんていらない!」

 すぐさま否定した。炎の厄災は肩を震わせ大声で笑いだした、上半身の後ろにのけ反り両手を広げ大いに笑う。

「結構! 期待通りの答えを言うじゃないか少年。だが一つ違うな」

 厄災は上半身を戻すと姿勢よく立つ、両肘を少しだけ曲げて両腕を左右に少しだけ広げる。

「少年も魔人だ」

 見えていた口の上に丸く白いものが二つ、突如として現れた。厄災の目なのだろう。

「私だけではない、少年も魔人である」

 何を言っているのだろう、レイにはさっぱり理解できない。困惑した顔でレイは訴える。

「僕は人間だ、魔人なんかじゃない!」
「否、少年は魔人である。この膨大なエーテル量と禍々しいエレメントは人のそれにあらず!」