黒く焦げた大地、辺り一面焦土と化した光景だった。彼はその景色を知っている、確かに彼はそこにいた。そこで育った。そこは跡形もなく消えたケルミナの村だった。

「ここは、ケルミナ?」

 山の麓にある村、毎年のように山の洞窟では貴重な鉱石が発掘される。鋼のように固い鉱石は旅人達の武器や防具の素材となる。その中にはとても純度の高いダイヤモンドも発掘されてきた。それも昔の話。帝国がケルミナを襲った後鉱山は崩れ封鎖されてしまった。
 レイは跡形もなく消えたケルミナを歩き回る、昔の思い出を頼りに家が建っていた場所。友達と遊んだ広場や牧場、そういった思い出の場所を回る。

「この前と何も変わらない、全く同じだ」

 廃屋すら残っていない、まるで大爆発があったかのように焦げた土だけが残っている。村の中央部へと戻ってきたレイはもう一度ぐるっとあたりを見渡す。

「ん?」

 入り口の近くに人影のようなものが見えた、揺ら揺らと揺れる黒い人影。しばらくした後ゆっくりと消えた。レイはとっさにそこへ走り出す、だが何もなかった。

「今確かに……」

 そこまで言うと背中に違和感を覚えた、体ごと後ろへと振り返ると今度ははっきりとした姿をとらえる。人だ、人がレイのすぐ後ろに立っていた。

「っ!」

 瞬間的に後方へと飛ぶ距離を取る。見た事のない男性がそこに立っていた。縮れた黒く長い髪の毛に炭のように黒い肌、背格好はレイより二回り大きい。全体を影に覆われているようだった。

「誰だ!?」

 右手を腰にやるがポーチがない、霊剣を取り出そうとしたが右手はむなしく空をつかむ。舌打ちを一つして目の前の男を警戒する。

「やっと会えたな少年よ、心から待ちわびたぞ」

 恐ろしく低い声が聞こえる、それもノイズが掛かったような声。不気味にも思えるその声に、レイは一歩後ろへと後ずさりする。