攻撃がレイの頭へと襲い掛かる、少しの手ごたえを感じたガズルは次の瞬間奇妙な違和感を感じる。確かにあった手ごたえはすぐに消え目の前からレイが消えた。途轍もないスピードだった。瞬間的にレイは後方へと移動していた。とっさに頭を守ろうとしたのだろう。だが僅かながらでもガズルの攻撃を受けたレイは項垂れてフラフラとしている。
 ガズルは地面に着地するとレイの姿を探す、一瞬の事で彼を見失っていた。前方へ視界をやると項垂れているレイを目視しもう一度飛び掛かる。

「帰ってこい!」

 右腕を振りかぶって同じ攻撃をする、まっすぐに右手を伸ばしストレートを叩きこもうとするが何か目に見えない壁のようなものに阻止されてしまう。物理障壁だ。攻撃を弾かれたガズルはその反動で宙に舞う。項垂れていたレイは左手を前に出すとカルナックが見せた衝撃波をガズルに向かって放つ。それをまともに浴びたガズルは抵抗することもできずに大きく吹き飛ばされる。体制を立て直すことも許されず雪が積もる地面へと激突するが、雪がクッションとなり激突した衝撃はさほどでもなかった。だが真空の衝撃波を浴びたことで体中無数の切り傷ができた。

「障壁まで……こうなっては仕方ないですね」

 カルナックはガズルを庇う様に前に立った、シトラもカルナックの右に並んで立つ。二人は一度大きく深呼吸をすると目をつぶった。するとどうだろう、二人の足元に積もった雪が一瞬で空に舞い二人の髪の毛がバタバタとなびき始める。

「シトラ君、君まで付き合うことはないのですよ?」

 カルナックがそう言いながら左手を横に伸ばす。

「これ以上被害が出る前に私も協力します、先生にだけ任せたら彼本当に死んじゃいますから」

 シトラも同じように右手を横に伸ばす。二人を中心に風が暴れ、降っている雪をブワっと吹き飛ばした。ゆっくりと二人は目を開き、エーテルバーストを引き起こしている対象者を見つめる。
 後ろで成すすべもなく見ていることしかできないガズルとギズーは二人が一体何をしているのか全く分からなかった、途轍もない量のエーテルが二人を覆い、揺ら揺らとしたオーラのようなものが二人から出ている。そしてこの後カルナックとシトラが何をしようとしているのかを知る。

「インストール」「インストール」

 二人は同時に叫んだ。