そう、本当に凄まじいのはカルナックだ。インストール状態のレイに対し生身同然のカルナックはその攻撃を防ぎ今度はこちらから攻撃に打って出る。体当たりで重心がぐらついたレイは後ずさりし、右手に握る霊剣を思い切り後ろに振りかぶるとカルナック目掛けて振り下ろす。それをカルナックは右足でレイの手首ごと蹴り飛ばす。意識があれば苦痛に顔を染めるほどの威力を持っているだろうそれはまたしても後ろで見ている二人の目には捉えることが出来ないほどの早さだった。

 言うなれば神速、元よりカルナックの肉体は法術による強化を施していない。この境地にたどり着くには行く年と修行を積み己の肉体を鍛え上げなければ到達できない境地にまで上り詰めている達人のようだった。刃をさかさまに変え目にも留まらぬ速さでレイの体を打ち抜く。音が一秒間に何度も聞こえる、そう例えるのが正しいのか分からない程の速度でレイの体を打ち続ける。

「これが……剣聖」

 ガズルが防ぐことすら許されないカルナックの攻撃を受け続けるレイの姿を見ながらそう呟く。まさに最強と言う言葉が相応しいと思った。
 ダメージが蓄積し立つことすら出来なくなったレイは崩れ落ちて地面に膝を付く。体は痙攣し指一本動くことが出来ない状態になっていた。

「残念ですレイ君、もう君は戻ってこないだろう……せめて最後は私の手で」

 振りかぶったその刃はレイに刃を向けていた、とっさに気づいたギズーは右手に構えていたシフトパーソルでカルナックの持つ刀を狙い撃った。

「ダメだ剣聖!」

 激しい轟音が辺りに鳴り響いた、周りに聞こえる音は雪が深々と降り注ぐ僅かな音を奏でる中に鳴り響いた銃声は辺り数フェイズまで聞こえただろう。銃口から発射された弾丸はカルナックの持つ刀の柄に当たり彼の手から獲物を弾いた。

「ギズー君……」

 白い息を吐きながらギズーは右手だけで構えていた銃を両手に持ち替えた、ギロリとカルナックを睨み付けて手を震わせながら

「無力化出来るならそれだけで良いじゃないか剣聖、それ以上する必要は無い!」

 睨みながらそうカルナックに銃口を向ける、だが状況は一変する。
 レイの体に付けられた怒涛の攻撃痕が見る見るうちに修復を開始した、深いダメージを追ったその体はまるで何事も無かったかのような回復速度で治癒していきレイの体を動かした。右手に握る霊剣に力をこめ、刀身を後ろに静かに引いた。

「先生、危ない!」