とても冷たく、暖炉の火も揺らぐような寒気をそこにいる全員が感じた。ゆっくりとドアから出てきたのは意識を失っているレイだった。

「まさか、レイかよ!」

 ガズルが叫び右手を天井に向けて突き上げる、手のひらに渦巻く小さな重力球から発せられる磁力と引力でレイの身動きを制限しようとした。

「……う……ぐぐ……ぐががが……っ!!」

 彼の持つ霊剣がカタカタと音を立ててレイの腕から離れようとしていた、それを見てカルナックが声を荒げる。

「ダメですガズル君、霊剣が君の引力に引き寄せられている! 彼の手から離れた霊剣の重さで君の腕ごと吹き飛んでしまう!」
「っち!」

 重力球を握りつぶして周りの引力を開放すると同時にレイが目にも留まらぬ速さで三人の元へ接近する。それを目視できたのはカルナックただ一人。だが目視できただけで反応することが出来なかった。レイは目の前のガズルに右足を使って腹部を蹴る、速度も相まってガズル以上の脚力を発揮する。溜まらぬガズルは壁へ吹き飛ばされ突き破って外へと飛ばされてしまう。

「早いっ!」

 カルナックがレイの右手を掴む、同時にギズーがシフトパーソルの柄でレイのコメカミを叩くが全く手ごたえを感じなかった。続いてカルナックが刀を持ち替えて首元に峰打ちを入れる。

「いててて……何ってスピードと力だ。これがインストールって奴の本領かよ!」

 起き上がりながら腹部を押させて叫んだ、それと同時に中に居たはずの二人も外へと吹き飛ばされてきた。

「なんて力だ、剣聖よこれが氷のインストールの力なのか?」
「いえ、氷の力ではないですね。だが彼自身こんな強さを見につけていたとも思えません」

 ガズルとは違い二人は受身を取って相互に答える。明らかにカルナックの顔には焦りがにじみ出ていた。