「仕方有りません、こればかりはあの二人の強さ次第でしょう。先ほどから二人のエーテルの量は変わっていませんのでまだ何も変化はおきて無いでしょう」

 スッと立ち上がりカーテンの外を見る、この季節にしては珍しい大雪の日だった。昨夜から降り始めた新雪は次第に量を増して道を隠していく。

「ただ、先ほども説明した通り最悪の事態には備えて置いてください。エーテルバーストが起こり自我を亡くしたら最後。彼らは見境なく私達を襲うでしょう。その時は心を鬼にしてください」
「それだけは避けたいな、仮にバーストしたとしてその力はインストールした時と同じなんだろう? 元々の強さが桁違いのあいつ等が更に強化されたとなれば俺達が太刀打ち出来るかどうか。剣聖が使った精神寒波が常に出されてる状態であれば俺達は身動き一つ取れないだろうからな」

 最悪の事態に備えろと言われてはいるがまさにその通りだった。その前に二人は親友である二人と戦う事自体に違和感を覚えている。今まで一緒に過ごしてきた仲間と急に戦えとは剣聖も人が悪い。だがそうでなければ自身すらも守れない事は分かっている。カルナックが一番恐れていた事はまさにこれなのかもしれない。

「だがよ剣聖、仮に習得できたとして勝算は正直どうなんだ? インストールマスターのレイヴンの力は一度戦ってるから有る程度は分かるけど、それでも全力じゃなかったはずだ。あの時戦ったレイヴンのさらに何倍も強いんだろう?」
「そうですね、どの位の力を出したのかは分かりませんが比較になら無いでしょう。ましては炎のインストールです。尋常では無い戦闘能力である事は確実です、私の元で修行していた時とは比べ物に成らないほど強いでしょうね」

 フフと笑って見せる、その笑顔にガズルとギズーは正直呆れていた。

「剣聖、あんたって人は本当に雲をつかむような人だな。何がそんなに嬉しいんだ?」