翌朝、彼等は身支度を簡単にすませると近くにある町に立ち寄るためその荒野を歩き出した。
 その日、町では何者かが町を荒らしていた、食料売り場ではほぼ脅しに近い状態で食べ物を漁っていく、周りの人達は怯えて何もする事が出来ずにいた。

「オヤジ! 俺達は帝国兵だ、だからちょっと割り引いてもらえねぇか?」

 懐にある剣をちらつかせながら不敵な笑みでガトーに商談を迫った。だがマスターは眉一つ変えずに、

「駄目だ、帝国だろうが何だろうが商売の邪魔をするならここから出て行ってくれ」
「んだぁ? ずいぶんと舐められてるな俺達も」
「知らん、さっさと出て行ってくれ」

 ガトーの挑発ともとらえられる発言に怒り出した、腰に据え付けている剣を取り出すとカウンターに身を乗り出そうとした時隣でコーヒーを飲んでいた少年に腕を捕まれた。

「喧嘩なら余所でやって下さいよ、朝のコーヒーが台無しだ」
「なんだこのガキ、俺様達に意見するのか?」
「意見? とんでも無い、命令だよ」

 オーナーの言葉と少年の挑発的な言葉に沸点の低い頭が沸騰する、怒ったのではなく完全に理性を飛ばしたのである。少年の腕を掴み外に引きずり出しそして放り投げた。

「待ってろよくそ野郎! テメエはこのガキの後だ!」
「はいはい、その子に勝てればね」

 そんな捨て台詞をはきながらガトーは少年の使っていたカップを下げる、その余裕に三人に怒りが収まらない、この男達は少年一人に対して大の大人三人が路上で剣を片手に少年を睨んでいた。

 一方少年は青い玉を小物入れから取り出し軽く手のひらで弾いていた、ぽんぽんと同じリズムで空に放られてはまた自分の手の中に戻ってくる。

「それで? その剣で僕をどうするつもり?」

 笑顔でそんな事を言う少年に対して真ん中の男がいきり立ったまま前へ出る。

「こうするんだよ!」

 その後に二人は続ける、着々とその距離を縮めていく帝国兵に対して笑ったままの少年は玉を投げるのを止めて交差するかのように帝国兵の三人とすれ違い、その手には先ほどまでは無かった大きな剣が握られていた。

「やれやれ」

 紅茶を片手に店の入り口でその様子を見ていたガトーは首を横に幾度か振った、紅茶を音を立てて飲み干している間に帝国兵は血を流しながらその場に倒れた。
 その時町から一斉に大きな声が聞こえてきた、それはよくやってくれた、とか、最高だ。なんて声も聞こえる。

「全く、朝から退屈させてくれないよこの町は」

 朝のコーヒーを邪魔された少年は不満そうにそう呟く、

「所でレイ、こいつらどうするんだ?」

 レイと呼ばれた少年は剣を再び青い玉に姿を戻し小物入れにしまった、腕を組み暫く首をかしげて考えていたが暫くすると、

「死なない程度で終わりにしたから自分たちで逃げるでしょう?」

 レイの言葉通り帝国兵の三人はゆっくりと立ち上がり剣を手に取りレイを睨む、すると何処にそんな力が残っていたのか分からないが一直線にレイに向かって走ってくる。

「小僧ぉ!」