音を聞く限り、一人であろう。


であれば、看守だろうか。


 刑を執行しに来たのかもしれない。


 朱熹は恐ろしさに身震いした。


 彼女が着せられた罪は、皇帝の暗殺未遂である。


どれほど残忍な方法で殺されるのか、想像したくもない。


 靴の音は、朱熹の檻の前に来ると止まった。


 檻の前にいる人物は、滑らかな絹で作られた、見るからに上等な黒色の漢服に身を包み、手には小さな手燭を持っている。


 牢獄の高さが、彼の胸辺りまでしかないので、顔は見えなかった。


 衣を見る限り、看守ではなさそうだ。


では、誰が……。


 固唾を飲んで、男を見ていると、彼はすっと腰を降ろした。


 手燭に灯された男の顔を見て、朱熹は驚きの声を押し殺すように両手で口を塞いだ。