彼女は瞼に力を込めて目を瞑り、再び絶望のため息を漏らす。


 死を受け入れたとはいえ、怖くないわけではなかった。


体の芯から湧き上がる震えを、抑えるので精一杯だ。


 分厚い煉瓦の壁に囲まれているとはいえ、物音一つしない暗闇の静寂は不気味だった。


 彼女以外に人の気配がまるでしない。


他の囚人や看守はどこにいるのだろうか。


 冷たく暗い檻の中で、囚われてから十時間以上は経過している。


外はもう、夜だろうか、それとも夜が明ける時間だろうか。


 窓一つない牢獄の中からは、時間を推し量ることさえできない。


 自らの吐息しか聞こえぬ静けさの中、突如、コツ、コツ、コツ、とこちらに向かって歩いてくる靴の音が耳に届く。