「陛下……、それはあんまりです……」


 鉄柵に額をつけ、項垂れながら恨み言を零す。


 私には、拒否権などない……。


そんな抗いようのない事実が重くのしかかる。


「朱熹、改めてもう一度聞く。余に仕えよ」


 聞くと言いながら、仕えよと命令する。


そう、これは命令なのだ。


拒むことは許されない皇帝勅命。


「……はい、謹んでお受け致します」


 朱熹の言葉に、曙光は今日初めて、うっすらと口元に笑みが浮かんだ。


「それでは、正式に勅命を言い渡す。

朱熹は、本日より皇后となる」


 ……こうごう?


 はたしてそんな務めはあっただろうかと頭を巡らす。


 侍女、女官、女嬬、雑仕……宮中で働く女性の役職を思い浮かべてみたが、こうごう等という役職はなかった気がする。