黒塗りの煉瓦で作られた分厚い壁に囲まれた牢獄は、まるで地下洞窟の中にいるように、閉鎖的で冷たかった。


 牢獄の広さは四平米ほどで、高さは立ち上がると天井に頭をぶつけてしまうくらい低い。


囚人は頭を上げてはいけないのだろう。


 黒牢と呼ばれる死刑囚用の部屋の中は恐ろしいほど暗く、鉄柵の外から零れる僅かな蝋燭の明かりだけが頼りだった。


 ……どうしてこんなことに。


 罪なき罪人、李 朱熹(り しゅき)は、薄桃色の唇から絶望のため息を漏らした。


 齢十八の若さで、夫がおらぬどころか恋の喜びも知らぬまま、命を終えようとしている。


 美人、とはいえぬとも、白く美しい陶器肌に小瓜型の面立ち。


凛とした黒眉からは彼女の芯の強さと聡明さが垣間見られる。