「大丈夫ですか? 蓮華様……本当に酷い……」
「大丈夫よ。千代がこうして助けてくれるだけで、私は嬉しい」
「穂波様」

 眉をくしゃりと寄せ、泣きそうな顔をしながら千代は穂波を抱き締めた。穂波の着物が泥水に濡れてることも気にせず、千代は穂波を抱き締めた。

「ありがたいお言葉です。穂波様……私はずっと、穂波様の味方ですからね」

 家族に愛されなくたっていい。血の繋がりがなくても良い。自分を思ってくれる大切な人が、そばに居てくれれば生きていける。



 千代に手伝ってもらいながら、蓮華が水を撒き散らした玄関の後片付けをしていると、こんこんと扉を叩く音がした。

 扉を叩く主が誰なのか、穂波にはわかっていた。扉をそっと開くと、黒地に金ボタンの制服を着た一人の若い男が立っていた。