藤堂家の当主は、本家と分家の人間から選ばれる。年齢、性別、家系、実績、全てが関係ない。全員が対象者だ。

　だからこそ全員がその座を夢に見て、狙い続ける。そこで起きる争いこそが一族を強くするのだと、昔から聞かされてきたが、穂波は愚かな考え方だと思っていた。

　当主が殺されたというのに、毎回犯人探しをすることもないこの一族を異常だとも思っていた。

「時隆様の遺言の下、行われるということですよね……どんな遺言なんでしょう」
「時隆様は変わり者だったからね。私なんかにはとても推量れそうにない」

　次期当主を決める方法は、前当主の遺言に基づき決定される。時には一族内の投票。時には武道の大会。時には芸を競うなど毎回内容は違った。

「何であれ、私には関係ないから……」