「死因は、左胸を短刀で一突きされていたからだとか。都姫様が見つけられた時にはもう手遅れだったようです」
なんとなく彼の死を聞いた瞬間。殺されたのではないだろうかという疑念は穂波の頭によぎっていた。
藤堂家の当主が殺されることは、過去何度もあったからだ。長兄が跡を継ぎ当主になる制度ではないからこそ、この一族内の当主殺しは終わらない。
だが、都姫が第一発見者だったとは考えてもみなかった。その話を聞いた途端、嫌でも都姫が母を刺した時の記憶が蘇ってきた。まさか都姫が時隆を……?
そこまで考えたところで穂波は首を横に振り、想像するのを止めた。
「また、始まってしまうのですね。藤堂家の当主争いが」