「あの方を姉だなんて思ったことは一度もありません。彼女と同じ血が流れてる……考えるだけで、自分がとてつもなく汚らわしい存在に思えてきます」

 三年ぶりに再会した妹の口から語られる想いに、穂波は耳を塞ぎたくなった。

 両手で口元を抑え、とっさに障子の裏に隠れる。息を殺して、会話に耳を立てた。どくんどくんと、自分の動悸が早まっていくのが鮮明にわかる。

「あの日、彼女が母を刺さなければ……何度も、そんなたられば物語を考えてしまいます」

 妹の話している言葉は、嘘だ。本当に母を刺したのは。

「私は、あの女が憎い」

 この妹なのだから。