田辺とスーパーに向かい、カゴに卵を一パックと、お菓子とアイスを入れた。
セルフレジは変わらず故障中のようで、さっきとは違う店員さんのレジは並んで、足早に、卵が割れないように気を遣いつつ大塚さんの家に戻った。

引き戸を開けると、玄関にはまめ太が座っていて私は思わず「わっ」と声を上げる。

「おーっ、まめ、待っててくれたのか」

田辺に返事をするみたいにまめ太は「わんっ」と鳴く。 すると、奥から「あっ!」と隼人くんが顔を覗かせた。

「おじちゃん! おにーちゃん! おねーちゃん来たよぉ!」

大きな声でそう言いながら台所に戻って行く隼人くんを見て、隣で田辺が「ずっと元気だな」と呟いた。

台所に向かうと、ケチャップの香ばしい匂いがした。

「いま、ケチャップライスができたところだ」

「すごい、快人くん作ったの?」

「う、うん……教えてもらいながら、だけど」

そう言う快人くんの隣で、大塚さんは「いいや」と首を横に振る。

「作り方、大体自分で分かってただろ?」

「……お父さんに、教えてもらったことがあったから」

木べらでフライパンのケチャップライスを混ぜながら言う快人くんの横で、隼人くんが「お母さんがいない日は、いつもおとーさんのオムライスだったもんね」と言った。

「良い父ちゃんだな。 隼人、ケチャップを盛り分ける皿持ってきてくれ」

「うんっ」

私は大塚さんに買ってきた卵を渡して、茶の間に戻った。 オムライスが出来上がる所を見たかったけれど、そんなに広くはない台所に私と田辺が入るととても窮屈に感じられたから、おとなしくしていることにした。