自転車に乗って、田辺が言っていた桜の葉公園に向かう。 住宅街を抜けて、川沿いにまっすぐ伸びた土手を走る。
桜の葉公園は、小学生の時、学校帰りに遊びに行っていたことを思い出す。 あの頃は、まだ祖母も元気だった。
「きっつ……」
普段自転車で一生懸命こんな距離を走ることはないし、何より今日は自転車を漕ぎっぱなしで今まで以上にペダルが酷く重く感じる。
桜の葉公園の桜の木が見えて、ペダルを漕ぐスピードを速めると、桜の木の下に設置されたブランコに誰かが座っているのが見えた。
公園の入り口に行くには土手から橋に出て遠回りしなくちゃならないけれど、そんなことしている気持ちの余裕はないから、私は自転車のブレーキに指を掛けて、そのまま土手の坂を斜めに駆け降りた。
「わっ、わわ、」
思った以上に急斜面で、しかも地面はデコボコで振動が全身に響いて痛い。 足をペダルから外して斜面に踵を擦る。
平面に近づいたその瞬間にブレーキを思いっきり引くと、金具同士が当たってキイイーーッと甲高い音が鳴った。
砂利にハンドルを取られたけれどなんとか自転車が止まって、地面に片足をつく。 ドッドッドッ、と鼓動の音が耳の奥で鳴り響いている。
し、死ぬかと思った……。
「新名?」
名前を呼ばれて顔を上げると、日陰に覆われたブランコに座っている田辺が居た。