「あの……私たちは以前どこかで……?」



「ええ。幼い頃、私は父に連れられて、聖女が主催する式典に出席したことがあるのです」



 私には全く記憶がなかった。



「私は、私とたいして年齢が変わらない小さな少女が儀式を行っている姿に、釘付けになりました。彼女はとても神々しく、美しかった。年齢さえ感じさせないほどに。



 そこで私は、父に、『将来、あの少女と結婚したい』と言いました。すると父は、『あの子は聖女になるから無理だ』と。



 そして、その少女が成長した姿で私の前に現れたのです。最初は他人の空似だと思いましたが、徐々に確信に変わり、貴女を父と引き合わせたあと、それは確信に変わりました」









「貴女の境遇を利用して、あのような形で結婚を申し込んだのは、強引だったと思います。でも、私の貴女を思う気持ちに偽りはありません」



「いえ、殿下。殿下を利用していたのは私も同じです。やはり離縁していただいた方が……」



 <離縁>という言葉に私は強く反応した。次から次へと涙が出て止まらなくなっていた。



「どうかされたのですか?」



 子どものように泣きじゃくる私を見て、フィリップが尋ねた。



「わかりません……ただ、殿下とお別れするのかと思ったら急に悲しくなって……」



「そうですか……ならば、離縁するのはやめにしましょう。今日からは、本当の夫婦になれるよう、一緒に歩んでいきましょう」



「はい、殿下」



「これからはフィリップと」



「ええ、フィリップ……」