私には前々から考えていたことがある。



 それは、私の薬学に関する知識や技術を、人々に広く伝えることだ。



 流行り病の薬を作っていた時、もっと人手が欲しいと常に思っていた。



 薬学に詳しい者がもっといれば、流行り病の薬はもっと早く、もっとたくさん作れたはずだし、もっとたくさんの人を救えた。



 そのことをフィリップとトーマスに話したところ、トントン拍子に話が進んだ。



 聖女の宮殿の一部を改築し、薬学を教える学校を作ることになり、私も講師の一人として名を連ねることになった。



 そのため私は今、聖女として日々の祭祀をこなしながら、学校の開校に向けて忙しい日々を送っている。



 







「殿下、今まで大変お世話になりました。殿下のおかげでここまで来ることができました」



「そんな水臭い。私たちは夫婦ではないですか」



「そのことですが……殿下、どうぞ離縁して下さいませ……」



「……! なぜそのようなことを言うのです! 私のことが嫌になったのですか?」



「いえ……そういうわけでは……」



 私は言葉を濁した。



 私とフィリップが結婚したのは、私を母の手から守るためである。



 だが今や、その脅威はもうなくなった。



「私たちは仮初の夫婦。目的を果たした今、もう一緒にいる意味がありません。殿下は他の方と幸せになってください……」



「そうですか……あなたはそうお考えかも知れませんが、私は違います。正直に申し上げましょう。私は以前よりあなたをお慕い申し上げておりました」