「やれるものならやってごらん! ただし、何が起こっても、私は知りません!」



「最初からそのつもりです」



「そう。だったら早くお行きなさい」



 私はフィリップと共に、この場を立ち去ろうとした。



「フィリップ殿下!」



 私たちが背を向けるや否や、母がフィリップを呼び止めた。



「いくら夫婦であっても、これはマリアの問題。手出しは無用です!  殿下の身にもしものことがあれば、それこそ外交問題に発展し兼ねませんから――」



「はい……マリアが決めたことです。私は彼女の決断を最後まで見守ります」



 そう母に向かって答えるフィリップの目は、どこか冷ややかだった。









「私にできるのはここまでです」



「結婚早々、このようなことになってしまい、申し訳ありません」



「あなたの無事を祈っています」



 私は、具体的なことを何一つフィリップに話していなかった。だから、フィリップは私が何をやるのか全く知らない。それなのに、私を信じて送り出してくれた。



 







 私が馬車から降り立ったその場所は、宮殿から町を繋ぐ道だった。



 遠くに、宮殿を目指して歩いてくる一団の姿が見える。このまま私が歩みを進めて行けば、近いうちに私たちは顔を突き合わせることになる。









 私はゆっくりと、地面を踏みしめるように一歩一歩進んでいった。



 はるか遠くにいると思っていた一団であったが、実際に歩いてみるとあっという間だった。



 そして、とうとう私たちは対峙した。