久しぶりに再会した父は、意外と元気そうだった。



 立場が立場であるせいか、それほどひどい扱いを受けていなかったそうである。



 ただ、多少の心労はあったようで、頭に白いものが増えていた。その心労というのも、私のことだったようだが。



 形式上の結婚であったから、父も母同様に私に対する愛情が薄いのではないかと思っていたが、父に関してはそうではなかった。



 父は、村の生活に順応し、逞しく生きている私を見て驚いていた。



 だが、私と父は、お互いの無事を喜んだ。そして、今までの空白の時間を埋め合わせるように父と色々な話をした。



 これからは、やっと普通の父娘になれる。



 







「お父様から全てお聞きしました。やはりあなたは隣国の聖女だった」



「……<次期聖女>でした。もう私は<聖女>とは関係ありません。私はこれからもただの一市民として普通に暮らしていくつもりですから」



 父の救出を頼んだときから、私の素性がフィリップにわかってしまうことは覚悟していた。



 だが、フィリップは私の素性を以前から気付いていたような口ぶりだ。



「あなたは平凡な人生を望んでおられるようだが……そうは行かないらしい」



「え?」



 安住の地を見つけ、父も救い出せた。これからやっと本当の意味での私の人生が始まるところだったのに、まだ、何かあるのか……?



「実は隣国の聖女――あなたのお母様が、あなたを引き渡せと言ってきました」